世界中に何十億人といるゲーマーの個性や興味、動機を反映したゲームを開発し、ゲーマーを夢中にさせる──ゲーム制作者なら誰もが憧れることでしょう。
今や世界中のゲームコミュニティにおいて、かなりの割合を占めているのが女性ゲーマーです。その割合は全体の 50% に迫りつつあり、ゲーム制作会社にとって女性ゲーマーへの対応はこれまで以上に重要となっています。このブログでは、ゲーム開発者がどうすれば世界中のゲーマーの半数を魅了できるのかについて、アイデアをいくつか紹介します。時代の流れに乗り遅れないためにもぜひご参照ください。
当社がローカリゼーションで蓄積した知見から教訓を 1 つ挙げるとすれば、どんなストーリーにも完全な普遍性はないということでしょう。ある集団や文化で受け入れられたストーリーが、別の集団や文化ではそうはいかないことは珍しくありません。同じ理屈はゲーマーにも当てはまります。女性ゲーマーをとりこにする作品を制作したいなら、脚本家や開発者はシナリオデザインを批判的に見て、ゲーム内で女性がどのように表現されているかを精査する必要があります。
女性ならではの感性や経験は、あなたのストーリーではどのように描かれていますか? そのストーリーで女性キャラクターはどのような役割りを果たしていますか? 女性キャラクターの基本的な特質、テーマ、行動はどのようなものですか? そもそもあなたのゲームに女性キャラクターはいますか? これらの質問に対する答えと対処法は、あなたのストーリーに対する女性ゲーマーの印象に最も大きな影響を及ぼすでしょう。
ここで、映画業界においてジェンダー バイアスを測定するために用いられる「ベクデル テスト」について紹介します。テストの目的は、男女平等を促進する映画を賞賛し、女性が脇役でしかない映画を明らかにすることです。2011 年、UX デザイナーのエルサ バートリーはベクデル テストをゲーム仕様に作り替えました。エルサ独自の基準とは、いったいなんだったのでしょうか?
その基準とは、「ゲームには、プレイヤーが感情移入でき、助けを必要とせず、性を売り物にしない女性キャラクターが必要である」というものでした。あなたのゲームはその基準を満たし、あるいは女性がそれ以上に活躍するストーリーでしょうか?
男女でストーリーの受け取り方が違うように、情報の探し方やつながりの形成の仕方も男女では異なります。女性がどのようにゲームを探し、新しいゲームにたどり着くのかを考察し、あなたのゲームが見落とされないようにしましょう。 Newzoo が実施した消費者調査によると、ソーシャル ネットワークは女性ゲーマーに新しいゲームを紹介する場として重要な役割を果たしているといいます。女性の 39% が友人や家族を通じてゲームを見つけ、20% がソーシャル ネットワークでゲームを見つけています。逆に、友人や家族を介してゲームを見つけた男性はわずか 27% です。男性は主にゲームのレビュー サイトやオンライン ビデオ チャンネルを通じて新しいゲームを見つけています。 効果的なマーケティングを行うには、ターゲットとなる消費者を深く理解する必要があります。女性がどのようなゲームを好み、どこで新しいゲームを探すのかを把握すれば、時代の先を行くことができるでしょう。
近年、e スポーツシーンで女性プレイヤーの躍進はめざましく、競技ゲームの世界では欠かせない存在になっています。しかし、競技シーンにおいて女性が増加しているにもかかわらず、そのコミュニティは e スポーツコミュニティのなかで軽視され、今なお正当な評価を得られていません。
事実、プロゲーマーに支払われる年間数百万ドルもの賞金のうち、女性に支払われるのはほんのわずかです。BBC によると、e スポーツ界の高額報酬プレイヤーランキングの上位 300 人は全員男性で、トップの女性プレイヤーがゲームを通して稼いだのは、通算にして 45 万ドルをわずかに下回る額とのことです。男性の高額報酬プレイヤーで 700 万ドル以上稼いだ人たちと比べてみてください。この格差の背景には、男性優位の分野特有のハラスメントや差別の歴史があるため、e スポーツの世界でトップクラスに到達できる女性はほとんどいません。このような女性のロール モデルがいないという状況は、女性ゲーマーが真剣に受け入れられず、スポットライトを浴びることを困難にするという悪循環を生み出しています。 女性ゲーマーの立場を強固にすることは、固定観念を打ち破り、競技ゲームシーンの風向きを変えるために不可欠な次のステップです。先進的な企業のなかには、e スポーツの分野における包括性を推奨し、差別的行為を根絶しようと乗り出したところもあります。フォーミュラ 1 のウィメンズ ワイルドカードは、F1 e スポーツシリーズのシムレース コミュニティに女性を受け入れ、才能ある女性プレイヤーにプロシリーズの出場権を保証するというものです。同様に、Riot Games 主催の女性専用トーナメントである VCT Game Changers プログラムは、女性ゲーマーがプロフェッショナルな環境で、安全に競技に参加できるよう考案されました。
両者の取り組みは e スポーツの男女平等実現に向けた堅実な一歩となりましたが、女性ゲーマーと男性ゲーマーの間には、サポートやリソースの点で大きな格差が残っているのが現状です。Cloud9 White のプレイヤー、メラニー カポネは、e スポーツシーンにおける女性の地位向上に取り組んでいます。 「メディアによる扱いやチーム加入契約だけではなく、コーチや副コーチ、アナリスト、それに本当に有能なマネージャーといった女性チームをサポートするのに必要なリソースを確保するといった、質の高いアプローチがとても重要だと思います。もし 1 チームでもそれを達成することが出来たなら、"1 マイル 4 分の壁"が打ち壊された時のように、不可能も可能になるはずです。前例のないことでも誰かが成し遂げることができれば、次々と後に続く人が現れ、急に実現可能になるのです」
プロの女性ゲーマーは、収入は少ないものの、男性に負けず劣らず熱心であり、大好きなゲームをプレイすることで生計を立てたいと願っています。大きな可能性を秘めた未開拓の市場で認知度を高めたいのであれば、女性の e スポーツ プレイヤーとのコラボレーションを検討してみてはいかがでしょうか。数十億ドルもの規模を誇る業界の一部を掌握できるかもしれません。
業界を問わず、企業におけるリーダーシップの多様性は、提供する製品やサービスの多様性につながるという研究結果があります。これはゲーム業界にも当てはまります。ゲーム業界の採用は、歴史的に男性が偏重されていました。
IGN のインタビューで、モントリオールを拠点とするゲーム開発者のターニャ ショートは、ゲーム業界における女性役職者の少なさに懸念を示しています。「ゲーム業界は悪循環に陥っています。あるプレイヤー層を主なターゲットに定めた製品を作り、その出来がすばらしいものなら、製品をプレイした人たちが、そのような製品をもっと作りたいと思う可能性は高くなります」とショートは言います。 「男性開発者が男性プレイヤーをターゲットとした製品を作ると、男性プレイヤーの間でそのようなゲームを作りたいという意欲が高まります。女性がこのサイクルを断ち切るのは難しいですが、女性ゲーマーが求めているものをうまく表現し、さらなるゲームプレイや購入を促すゲームを作っていくには、通らなくてはならない道です」
『The Sims』のクリエイター、ウィル ライトは、2008 年に Fast Company のインタビューで「ゲーム業界のために、業界で働く女性をもっと増やすべきだ」と述べています。「私たちはこれまで、自分たち、つまり 40 代の男性に受けるゲームを作ってきました。思えば、『The Sims』が女性ゲーマーに指示された理由のひとつは、開発チームの 40% が女性だったからでしょう」
男女格差を認識することはすばらしい第一歩ですが、会社に女性の参画と昇格を促すにははどうすればいいのでしょうか? まずは、会社の文化がさまざまな視点や意見に寛容的で、それらを尊重し、奨励しているかどうかを確認してください。
採用したり、仕事の説明をしたりする際は、慎重に言葉を選びましょう。KPMG の研究によると、女性役員の 75% がインポスター症候群、つまり自分の能力や実績を自分が信じられない状態に陥っているそうです。また、ハーバード ビジネス レビューのレポートでは、通常、女性は条件をすべて満たしていないと仕事に応募しないといいます。対して男性は、応募条件の 60% を満たしているだけで応募する傾向があるそうです。
「自分の長所やスキル、業績を正しく認識することが大切です。成功するには、自分の能力を信じないと」と、ライオンブリッジ ゲーム部門の営業部の VP、エイミー ナントは言います。「もっと協力的で、包括的な環境を整えることで、女性の活躍を後押しできます。そうすれば、成長を続け、会社の成長に貢献してくれる有能な女性にもっと興味をもってもらい、雇用できるでしょう」
女性を役職に採用しつつ、多様性の推進をトップ層だけにとどめるべきではありません。チームを率いてゲーム制作を主導する役割に女性を採用するだけでなく、テスティングにも女性テスターを採用することが重要です。ゲームの発売前にさまざまな人にプレイしてもらうことで、各プレイヤー層の心に響いたかどうかを知ることができます。
ライオンブリッジ ゲーム部門はゲーム業界の収益構造において男女平等な雇用機会と待遇を積極的に確保していくパイオニアです。当社はゲーム テスターからコンテンツ ライター、プロジェクト マネージャーそしてコーポレート リーダーにいたるまで、さまざまなポジションで女性従業員の採用を心掛けています。その実績が認められ、『フォーブス』の「米国で女性が最も働きやすい企業」に複数年連続で選出されています。
ライオンブリッジで働く女性たちを紹介します。彼女たちのキャリアが参考になれば光栄です。
「ゲーム業界を見ていると、女性を積極的に採用することで、これまでにない視点や経験を得られると心から信じられます。それによってさらに包括的かつ革新的なゲーム開発が可能になるはずです」と、ナントは述べます。
女性ゲーマーはモバイル ゲームを好み、男性ゲーマーよりも多くの時間とお金を費やしていることは数字を見れば明らかです。女性ゲーマーの 64% が他のプラットフォームよりモバイルを好み、32% が週に 5 日以上プレイすると回答しています。
モバイル ゲームは一般に増加傾向にあり、一部のパブリッシャーはすでにその流れに乗っています。従来の AAA タイトルは家庭用ゲーム機や PC でしかリリースされていませんでしたが、近年では AppStore や Google Play ストアで多くの大予算タイトルが注目を集めています。『原神』や『フォートナイト』、『Roblox』がモバイル市場で大成功を収めていることから、モバイル向けタイトルの開発は有望な投資だといえるでしょう。
そこに女性ゲーマーという要素を加味すれば、チャンスは倍増します。モバイル ゲームなら、オーディエンスがどこにいても、その反応を見ながら、こうした成長トレンドを利用することができます。女性ゲーマーを取り込むなら、彼女たちが魅力を感じている世界に足を踏み入れる必要があります。つまり、モバイルゲームに投資するのです。そこに女性主導のしっかりしたストーリーや、女性をターゲットに見据えたマーケティング戦略を組み合わせれば、投資はきっと実を結ぶはずです。
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