オリジナル版とローカライズ版の音声制作を統合

プロセスの統合による制作期間の短縮と成果の改善


近年、新しい市場に向けたカタログ タイトルのリブートやリリースが急増しています。これは、オリジナル版のコンテンツがほぼ完成している状況でローカリゼーションを開始するゲームが増えていることを意味しています。しかし、全体の傾向は異なります。

多くのゲームがサブスクリプション モデルに移行し、ダウンロード コンテンツ (DLC) によってタイトルのライフサイクルが延びたことで、ゲーム コンテンツのリリースは回数が増え、制作サイクルが短期化されて、ほぼ切れ目のないコンテンツ制作とリリースが繰り返されています。

ゲーム音声の場合、オリジナル版が完成して確定する前にローカライズ版の収録が始まるのが今や当たり前となっています。クリエイティブなコンテンツを扱うローカリゼーション チームにとっては、次々と変化する目標を達成しようとしているようなもので、終わりがありません。一方、プロデューサーやマネージャーは、複雑なウォーターフォール型の制作工程を管理しなければなりません。

ライオンブリッジ ゲーミング部門では、独創性の高いオリジナル音声制作で知られる米国のスタジオ「Rocket Sound」を買収したことで、工程をより合理化して制作を加速させるための体制を整えました。オリジナル版とローカライズ版の両方の音声収録を含む新たな統合サービスを通じてゲーム制作工程を簡素化し、対象製品に対する知識をさらに深めて蓄積することで、より効率的で柔軟な対応が可能となります。


2 つの過程から成果を得る

オリジナル版とローカライズ版の収録では、制作に使用する主要なツールについては共通するものが多いものの、収録プロセス、スキル、そして何よりもスタジオでの作業自体は異なる場合がほとんどです。

オリジナル版の音声は、当然、ゲーム デザイン全体に欠かせないものとみなされます。「フィール エンジニアリング」の重要な部分がここで生み出されるのです。収録チームは、開発スタジオと緊密に協力して、ゲームの世界観を表現する音声を制作します。スタジオのデザイン リーダーやライターは、通常、多くの収録セッションに立ち会います。ここでは、声優やディレクターが多様な「読み合わせ」を何度も行い、要望に合ったテイクが収録されます。この段階で、オリジナルのスクリプトが大幅に変更されることがあります。また、映像に合った音声を収録した後でも、ゲームのレベルや映像をさらに改善できる場合は、チームがスタジオに戻って新たな収録に取り組みます。

オリジナル版のソース音声には、それまでの数か月または数年のあらゆる努力が結実しています。一方、ローカライズ版の収録では、同じ成果を短期間で達成することができます。多くの場合、ローカライズ版の収録スタジオでは、ディレクターが声優と一緒にオリジナル音声を聞いて、意図、声の強弱、感情の出し具合など演技に必要となる重要な情報をともに判断します。このため、ローカライズ版の収録は、オリジナル音声との尺合わせやリップシンクという制約が加わるにも関わらず、かなりのスピードで進行させることができます。

オリジナルの音声制作とローカリゼーションで、チームの構成が大きく異なることもあります。事実、スタジオ、ゲーム メーカー、ローカリゼーション プロバイダーで、オリジナル版とローカライズ版の両方に関わっているメンバーが一人もいないことも珍しくありません。しかし、これでは製品知識の保持の面で無駄が多く、チーム間での移行プロセスについても非効率的な点が残ります。これを改善するにはどうすればよいのでしょうか。

製品に関する深い知識の共有

従来、オリジナル版とローカライズ版の音声制作チーム間での知識の移行・共有は、オリジナル音声自体とデザイン バイブル、キャラクター プロフィール、特殊効果 (FX) 処理についてのドキュメントを通じて行われます。しかし、これらをすべて合わせても、オリジナル版のチームが蓄積した製品に関する知識全体のほんの一部しか移行できません。さらに、急速に変化する制作環境では情報が日々更新されています。

オリジナル版とローカライズ版の収録チームを統合することで、両者の間で情報を直接かつ確実に伝達することができます。これにより、開発スタジオとメーカーの負担が軽減されるとともに、対応窓口を一本化できます。

従来、オリジナル版の収録チームにはローカリゼーション チーム向けに「ローカリゼーション キット」を準備するという独特な役割がありますが、当社の Lionbridge Games Cloud Audio ソリューションでは、オリジナル版とローカライズ版のスクリプトと音声が適切に整理された状態で保存されるため、ローカリゼーション チームは、標準化された形式のソース アセットにリアルタイムでアクセスできるようになります。

プラットフォームについても、ローカリゼーション チームがオリジナル版の収録で得られた注意事項やスクリプトに関する情報すべてにアクセスできるようにします。さらに、共有コメントを通じた直接のやり取りもできます。したがって、ローカリゼーション チームがゲーム開発チームに情報を求める頻度はぐっと減ります。

オリジナル音声をリアルタイムで共有したり、早期段階から参照したりできる点も大きなメリットです。たとえば、音声にかなりの FX 処理が施されるといった情報がキャスティングの時点でローカリゼーション チームに伝えられていることはまれです。しかし、声にある程度の FX がかけられる場合は、声の特徴よりも声優の演技の幅を重視したキャスティングも考えられます。この種の情報をタイムリーに得ることで、より理想的なキャスティングができるのです。

キャラクターが早口だったり、強い声を長く伸ばす必要があったり (「グレネーーード!」)、その背景に合った訛りが求められたりする場合も同様です。ゲームのコンテンツについて確実で詳しい情報をタイムリーに得られるかどうかが、ローカライズ版の音声がオリジナル版同様に魅力的なものになるのか、完全な失敗に終わるかのを左右することにもなり得ます。

制作の合理化

オリジナルとローカライズ版のそれぞれの音声チーム間で仲介役への依存を減らすことが、プロセス合理化を実現するための一つの方法です。前述のように、ライオンブリッジのリアルタイム クラウド ソリューションでは、アセットの転送と更新が不要になります。

制作サイクルが短縮化される昨今では、1 つのアセットの転送を削減することが、多数の更新の転送の削減につながります。オリジナル収録スクリプトの変更は、ローカリゼーション チームにもすぐに共有されるので、更新されたスクリプトを送る手間が省けます。複数バージョンのスクリプトをまとめる人員も不要です。人為的なエラーでバグが発生することもなくなります。

最近のあるプロジェクトで、ある役を演じる声優が一時的に稼働できなかったために、そのソース音声の調達が遅れたことがありました。当社チームは録音スタジオからその情報を直接受け取り、その役のローカライズ版の収録をすぐにキャンセルし、最短での再スケジュールを目指してソース音声の仕上がりについて日々最新状況をチェックしました。このように、正確な情報を早く入手できれば、その分、計画、スケジューリング、複雑なワークフローの調整を的確に行うことができます。これは、変更がローカリゼーション音声チームだけでなく、翻訳、LQA、さらに下流工程にある多くの人々に影響を及ぼす場合には特に重要です。

当社の調べによると、約 50% のローカリゼーション プロジェクトで、オリジナル版のチームが使用した FX 処理のプリセットが約 50% しか使用されていませんでした。残りの 50% の FX はローカリゼーション チームによって再作成されています。オリジナル音声とローカライズ音声を統合すれば、プロジェクトをより複雑にするこの種の重複タスクを削減できます。

ウォーターフォール型制作の打破

オリジナル音声とローカライズ音声制作を統合するアプローチは、ライオンブリッジ ゲーミング部門と当社のパートナーの双方に大きなメリットがあるというのが当社の考えです。たとえば、製品に関する深い知識、統合・最適化されたスケジュール、プロジェクト管理と重複タスクの削減、中継ステップをなくしたプロセスの合理化などがメリットとして挙げられます。ウォーターフォール型の制作における依存関係を削減することで、オリジナル版からローカライズ版への移行をよりスムーズに行うことができます。

お客様がオリジナル音声の収録に別のパートナーをお選びの場合でも、当社のチームがプロジェクトの早期段階から携わることで、プロデューサー、開発チーム、オリジナル音声チームと適切に協力し、ローカライズ版への移行を支援することができます。

当社の多くのお客様には、短期化されたリリース サイクルの中でバグの削減とコストの最適化を実現するために、当社のさまざまなサービスをご利用いただいています。当社は、あらゆる点でオリジナル版と同様にプレイヤーの心を掴むローカライズ音声を提供すべく日々努力を続けています。

オリジナル音声とローカライズ音声の制作を統合する当社のソリューションを通じて、ライオンブリッジ ゲーミング部門は、ここまでに挙げたすべてのメリットをもたらし、アセット管理と知識の移行に関わるお客様の負担を軽減することを目指しています。制作工程全体を当社がサポートすることで、効率性の高いスムーズな作業をお約束いたします。お客様のタイトル作品にあらゆる言語で命を吹き込むお手伝いをいたします。ぜひ当社までご連絡ください。


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著者
Richard Saadat and Tom Hays