テストは命綱
私の趣味はロック クライミングです。
怖いと思うことはありますが、病みつきになる面白さです。わずか数本のロープと小さな金具に命を預けるのですから、ゾッとする方もいるでしょう。ですが、愛用している器具の強度や耐久性が信頼できるので、安心してクライミングを楽しめます。
カラビナを例に説明しましょう。小さな連結金具ですが、耐久性という点において、極めて高い基準をクリアしていなければなりません。日常よりはるかに高い基準が求められます。さらに、ありとあらゆる誤使用を想定したテストも行われます。カラビナを逆向きに取り付けてしまったらどうなるのでしょうか。二重に負荷がかかってしまったら? 開閉部がロープに引っかかったら、アイスクライミングに使われたら、使う前に何度も岩に叩きつけられたら... さまざまな状況を想定したテストを受けていない製品は、壊れて使用者に重傷を負わせかねませんし、その結果、メーカーにも深刻な問題が発生する可能性があります。
私はビデオゲームも好きです。
この二つの話題はどう繋がるのでしょうか。
たしかに、少なくとも物理的被害という点では、ゲームスタジオにとって、ゲームのリリース後すぐにインフラに障害が生じても損害は少ないといえるでしょう。ですが、甚大な経済的損失を被る可能性はあります。リリース直後なのにおおぜいのプレイヤーの目に留まらず、数か月あるいは数年にわたる開発の努力が水の泡になってしまいます。数日もすれば、プレイヤーの興味はほかのゲームに移ってしまい、そのゲームには二度と見向きしなくなるでしょう。こうなってしまえば、取り返しがつきません。
そこで、管理されたあらゆる環境下でのテスト (プレイテスト、ユーザビリティ テスト、機能テスト、コンプライアンス テストなど) を終えたら、次は"制限を取り払った"環境で何回かセッションを行う必要があります。「"1 回のセッション"で」と言いたいところですが、負荷テストを 1 回で無事に切り抜けられたゲームはこれまでに見たことがありません。現実を模した環境を用いたテストは、期待、驚き、悲鳴の連続です。数日後、あるいは数週間後に改善された製品を用いて、再度負荷テストを行うというサイクルが繰り返されます。