プラットフォームのクラウド化に伴って生産性が向上し、テキストのローカリゼーションにおいて今では当然のように得られているメリットが生まれる中で、オーディオ録音技術にも革新的な動きが進んでいます。ライオンブリッジ ゲーミング部門では、ゲーム音声制作専用に構築された当社のクラウド型制作プラットフォームを活用し、その技術革新を支援しています。
プラットフォームのクラウド化に伴って生産性が向上し、テキストのローカリゼーションにおいて今では当然のように得られているメリットが生まれる中で、オーディオ録音技術にも革新的な動きが進んでいます。ライオンブリッジ ゲーミング部門では、ゲーム音声制作専用に構築された当社のクラウド型制作プラットフォームを活用し、その技術革新を支援しています。
自動化 (オートメーション) によって作業が簡素化され、退屈な工程が省かれて生産性が向上し、ヒューマン エラーも減少することでユーザー エクスペリエンスが向上します。しかし、同時に自動化によって「クリエイティブ」な創造的プロセスが阻害されるような状況も起こります。スマートフォンでメッセージ (あなた独自のパーソナルなメッセージなど) を入力する際に、予測テキスト機能によってありきたりで機械的な文が入力され、邪魔になった経験のある人は少なくないでしょう。
こうした経験から、クリエイティブな領域に自動化が入り込むことで、少し面倒なことになるのではないかという疑念が生じるのです。創造的であるとは、ルールを逸脱すること、専門的な判断を実行する自由があること、そして文字どおり、決められた台本どおりにはならないということです。このように相反するものをどう扱っていけばよいでしょうか。
モノと人をつなぐことが自動化であることは、あまり実感として感じないかもしれませんが (クリエイターの方にとっては朗報)、いずれも「付加価値の少ない人力のプロセスを減らす」という結果が導き出されます。従来のオーディオ制作では、世界各地のスタジオ同士、チーム メンバー間、さらにさまざまなツール間でコンテンツやデータをやり取りする必要がありました。
一元的な制作プラットフォームを通じて各種ツールを管理し、それぞれのチームが同じプラットフォーム上で作業を行うことで、データ移行を完全になくすことができます。つまり、ある工程の成果物を、そのまま次の工程の入力データとして使用するのです。当社の Lionbridge Games Cloud for Audio では、管理を担当するチームによってスクリプト管理システムに送られたコンテンツを、そのままローカリゼーション作業の入力データとして使用するだけでなく、自動化されたアセット検証処理にも活用します。これらのアセットは収録セッションに必要であるとともにバッチ処理にも使用され、QA 作業を担当するチームなどでも使用されます。
ワークフローの各ステップをつなげることで、スクリプトの編集を行う言語担当者、現場の音声ディレクター、ポストプロダクション工程のサウンド エンジニアや LQA テスターなど、今まで同じツールを使うことのなかったチーム メンバー間の関係が強化されます。ライオンブリッジのゲーム業界向けクラウド ソリューションでは、それぞれのチーム メンバーが同じプラットフォーム上で同じツールを使ってリアルタイムにやり取りすることができます。細かいレベルでのコメントや問題報告も可能です。コミュニケーションのために異なるツールを使用する必要性を省き、クリエイティブな環境を築くコラボレーションの場が生まれます。
モノと人がつながることで、煩わしさを生むことなく自動化を導入しながら、クリエイティブな共同作業の促進につながります。愚痴をこぼしたくなるような状況もなくなるでしょう。
学校を卒業して数週間の新人サウンド エンジニアに、ゲームの音声ファイルのポストプロダクションの工程について訊いてみれば、一連の手順をきちんと明確に示してくれることでしょう。しかし、残念ながら現実はもっと複雑なものです。同じエンジニアに 5 年後に同じ質問をしてみましょう。「その質問はどういう意味なんですか」と声を荒げるかもしれません。
70 年代に、専門的システムを使って仕事をしていたソフトウェア チームがまず直面したのはこのような現実でした。エキスパートとは、決まりきった道を進むのではなく道を切り拓く人々です。常に、そして多くの場合はほとんど無意識に、直面する問題の性質に応じてプロセスを調整していきます。エキスパートの性質が自動化に向かないのであれば、さらに向かないクリエイティブな作業については難しいのではないでしょうか。
解決策として、まず最初に、自動化がエキスパートの代わりとはならないことを認識する必要があります。自動化についての決定はあくまでエキスパートの判断であり、その設定や条件などの詳細もエキスパートが定義します。Lionbridge Games Cloud for Audio では、ゲームの録音に関するスタンダードや全般的な基準に準拠する設定を採用していますが、同時に、エキスパートが「ソースの長さの +/-27% に合わせる」などと判断した際にはその設定を優先する仕組みとなっており、その設定に準拠しないターゲット音声が生じた場合には警告メッセージを各ユーザーに通知します。
次に、エキスパートは多くの調整作業を通じて詳細な変更を加える傾向にあることを理解することです。これに基づいて Lionbridge Games Cloud の自動化とバッチ処理では、行レベルの調整を個別に設定できる仕様となっています。さらに、行レベルの範囲を対象とした「ミニ」バッチ処理を、既定の設定を上書きする形ですばやく実行することも可能です。また、情報が不十分なために現時点では最適なソリューションを確定できない場合があります。Lionbridge Games Cloud なら、現場の音声ディレクターが代替のテイクを差し替えることもできます。
細かなブロックごとに設定可能であり、構成や展開を容易に行える自動化機能を制作チームに取り入れることができれば、通常はエキスパートが臨機応変に構築するプロセスにおいて、時間の節約につながる各ステップの統合が可能になります。このような方法であれば、各エキスパートの管理も容易になり、必要に応じて既存のルールを逸脱させることもできます。Lionbridge Games Cloud の自動チェック機能では、ルール違反が QA などの関連するチームに通知されます。優れたコミュニケーション機能が組み込まれているため、すべてのユーザーがその理由を知ることができ、その正当性を確認することができます。
このような方法であれば、各エキスパートの管理も容易になり、必要に応じて既存のルールを逸脱させることもできます。
このように人を中心に捉えた自動化へのアプローチは、クリエイティブな内容を扱うエキスパートの方が、現在利用可能などのような自動化機能よりもはるかにうまく作業をこなせる場合があるという認識に基づいています。しかしそれでも、ユーザー パフォーマンスの向上が必要な場合もあります。
たとえば、音声関連のバグの中でも非常に一般的なものとして、スクリプトと音声の不一致があります。QA と LQA の各チームはコンテンツに不一致があることはわかっているため、問題はその箇所を見つけなければならないことです。これは干し草の山から針を探すようなもので、通常はオーディオ ファイルを一つずつ何度も再生しなければなりません。Lionbridge Games Cloud では、音声文字変換機能 (STT) を活用して音声ファイルのコンテンツを抽出し、生成された文字列とスクリプトを比較して一致しているかどうかを確認します。
STT は、映画やビデオ会議では驚くほどの効果を発揮しますが、ゲームによくある独特な文章や語彙、比較的短い文では苦戦する場合があります。誤検出の件数も増えやすくなります。当社では STT を強化した「STT+ テクノロジー」を開発し、不一致検出の精度を大幅に向上しました。言語によって多少の差はあるものの、約 85% は「問題なし」と断定することができ、これはつまり人による対応が必要なのは残りの 15% のみとなることを示しています。
さらに、音声とスクリプトの文字列を色による対比で視覚的に確認できるようになっているため、ユーザーはコンテンツにさっと目を通すだけで不一致の可能性を示す部分を特定し、その部分に対してのみ音声を確認できます。自動化と人の力をうまく組み合わせ、ユーザーが処理しやすい形で情報を提示することで、干し草の山の中からでもすべての針を簡単に見つけるような作業を効率よく行えるようになります。
ライオンブリッジでは、タイミングの制約に関する違反の検出についても同様のアプローチを採用しています。自動化されたチェック処理で問題が存在する可能性のある個所が特定され、視覚的に比較しやすい表示を通じて、人が修正の要不要を簡単に確認できるようになっています。音声同期の録音では、ソースとターゲットの各音声間で会話の合間の無音のタイミングを合わせる必要がありますが、ソースとターゲットの波形がオーバーレイで表示され、無音の箇所が視覚的に示されます。ユーザーは無音の箇所がどの程度揃っているかを目で確認し、そのコンテキストに対して十分かどうかをエキスパートとして判断することができます。
適切な自動化はクリエイティブな作業に対してもメリットをもたらします。ゲーム音声の制作においてもこれが例外ではないことを、ゲーム開発に携わる方々は十分に理解していることでしょう。ここでは、「適切な」という言葉が重要になります。自動化は人間の感覚の代わりにはならないのです。自動化は、日常的な繰り返しの作業を減らすことを目的としており、人の方が適しているクリエイティブな作業については、あくまで補助する役割を担うものです。
必要なのは、スマートフォンの自動修正機能のように勝手に変更を加えるのではなく、文書作成ソフトのスペル チェックのように、エラーの可能性のある個所を特定してくれるようなツールです。ツールの機能をエキスパートが完全に操ることができれば、ツールの機能をフル活用しながらも、ときにはルールに縛られず、自由に創造力を発揮できるようになります。